(システム化の始まり)
営業担当の課長として、民営化後最大の課題は、明治時代以来、紙カードで管理していた、お客様(加入者)の異動記録を電子データ化するための作業でした。
電話をひいた時に、支払った負担金がいくらだったかから始まり、電話加入権が誰に渡り、どこに電話が設置されたかというデータがすべて紙カードに記されていました。
全国にたくさんあった電話局の窓口では、ロータリーファイルという書庫に、電話番号順に紙カードを補完し、その中から時間をかけて探すという作業を行っていました。
電話局には、電話番号ごとに端子が収容され、電話局の外に出て、それぞれの回線が、事業所や住宅に向けて配線され、電話交換機で通話が接続されていました。
民営化前から、計画されていたシステム化が本格的に動き出し、すべての紙カードをコピーして、当時のシステムの文法にしたがってデータベースとして入力しました。
そのころのデータベースは、かな漢字をコードに変換して蓄積していました。今のような平文での入力ではなかったので、変換に手間がかかり、間違いも多々ありました。
渡辺さんの辺(なべ)のように、いろいろな文字や旧字を使うのも、コードでは単純な音だけにしてしまったので、あとで、元に戻すのに苦労した例もあったようです。
紺屋の白袴と言われても、仕方ないほど、初歩的な問題を抱えながら、紙カードのデータベース化が行われました。今でもその名残りが消えたわけではありません。